2024/12/09 14:04



【100年の伝統を受け継ぎ、現代へ紡ぐ雛人形作り】

埼玉県川越市にある津田人形制作。その歴史は100年を超え、代々人形作りを受け継いできました。現役で制作に携わる二代目・津田蓬生(84歳)は、長年の技術と伝統を守り続けています。

そしてその次男、津田直人(55歳)は、同じく人形作家としての道を歩み、現在は「春蔵」の代表として雛人形を制作しています。

高校卒業後、一度は会社員として働いた直人が再び人形作りの道を選んだのは、自身の中に芽生えた「ものづくりへの情熱」と「伝統を未来へ紡ぎたい」という思いからでした。そして津田人形制作での修業を経て、「自分らしい雛人形を世に広めたい」という願いから独立し、雛人形工房「春蔵」を立ち上げました。


津田 直人(55歳)


【娘とともに新たな挑戦、ブランド「HARUKURA」の誕生】

そんな父の雛人形に心を奪われたのが、娘の津田祐希奈(27歳)です。理学部を卒業しIT企業で経理として働いていましたが、帰省した際、父の手がけた雛人形に強く惹かれ、人形作家になることを決意しました。

「父の情熱や技術を絶やしてはいけない」との思いから弟子入りを志願した祐希奈。しかし、父・直人は少子化で業界が厳しさを増す現状を踏まえ、簡単には首を縦に振りませんでした。

そこで祐希奈は営業職へ転職し、販路開拓や販売促進の力を身につける努力を重ねます。その熱意が伝わり、ついに父から弟子入りを許されました。そして親子で新たに立ち上げたのが、雛人形ブランド「HARUKURA」です。

「モダンな色彩とクラシックなかたち」をコンセプトに掲げ、現代的で鮮やかな配色と伝統的な形を融合させた雛人形を制作しています。




【試行錯誤の中で見えた未来】

ブランドとしての活動が始まると、SNSでの発信やカタログ制作、ネットショップの開設と、積極的に挑戦を重ねてきました。最初は親子で意見がぶつかることも多く、思い描いた通りに進むことばかりではありませんでした。

しかし2023年、初めて百貨店でポップアップストアを開催。店舗づくりから接客まで、親子で力を合わせた結果、多くのお客様から温かい声をいただきました。
(新宿マルイ 本館にて)


「春蔵のお雛様に一目惚れしました」というお客様の声は、ブランドへの自信とさらなる挑戦への原動力となりました。

現在、雛人形の制作は父・直人が担当し、デザインの一部や営業活動、SNSでの発信を娘・祐希奈が担っています。親子二人三脚でブランドを育てながら、祐希奈は未来の雛人形作家として修業を続けています。

津田 祐希奈(27歳)


【伝統を未来へ、春蔵の願い】

「いずれは娘が私を追い越してほしい」と語る直人。親子の情熱が込められた春蔵の雛人形が、多くのご家庭で長く愛される存在となることを願いながら、今日も工房で制作に励んでいます。


※記載の年齢は2024年12月9日時点のものです。